2024
06.18

マイナンバーカード必須化で高まる利便性と課題 – 背番号制の可能性と高齢者への影響

国内政治

政府は携帯電話の契約時にマイナンバーカードのICチップ読み取りを必須とする方針を打ち出しました。この決定は、なりすまし詐欺などの犯罪防止を目的としていますが、同時にマイナンバーカードの普及促進にもつながるでしょう。背番号制度に賛成する筆者は、利便性の向上がカード偽造のリスクを上回ると考えています。

一方で、高齢者にとってはデジタル化への対応が課題となります。若者世代とのデジタルデバイドが深刻化する中、不便を強いられる高齢者の存在を無視することはできません。過疎地域に住む高齢者は、行政サービスや医療アクセスの面でも不利な状況に置かれています。

マイナンバーカードの普及は利便性の向上に寄与する反面、デジタル弱者である高齢者への配慮も欠かせません。国民全体の利益を考えるなら、若者世代の利便性を優先しつつ、高齢者へのサポート体制の拡充も同時に進めるべきでしょう。背番号制度の是非をめぐっては賛否両論ありますが、将来を見据えた建設的な議論が求められています。

1. マイナンバーカード必須化の背景

1.1 なりすまし詐欺などの犯罪防止

マイナンバーカードの必須化の背景には、なりすまし詐欺などの犯罪防止があります。マイナンバーカードには、偽造防止のための高度なセキュリティ対策が施されています。ICチップに格納された情報は、暗号化されており、不正に読み取ろうとすると内容が消去される仕組みになっています。また、顔写真入りのため、対面での悪用も困難です。

マイナンバーカードを利用する際には、暗証番号の入力や生体認証による本人確認が行われるため、たとえカードが盗難や紛失した場合でも、悪用のリスクは低くなります。24時間365日体制のコールセンターが設けられ、速やかに一時停止の処理を行うことができます。

以下は、マイナンバーカードのセキュリティ対策の一覧です。

セキュリティ対策内容
高度な偽造防止技術特殊な印刷技術により、偽造が困難
ICチップの耐タンパー性不正に情報を読み出そうとすると、ICチップが破壊される
暗証番号による本人確認カード利用時に暗証番号の入力が必要
生体認証による本人確認顔認証などの生体情報を用いた本人確認
24時間365日のサポート体制コールセンターによる紛失・盗難時の迅速な対応

このように、マイナンバーカードには、なりすまし詐欺などの犯罪を防止するための多層的なセキュリティ対策が施されているのです。

1.2 マイナンバーカードの普及促進

マイナンバーカード必須化のもう一つの目的は、カードの普及促進です。2023年6月時点で、マイナンバーカードの交付枚数は約6,000万枚、人口に対する交付率は約48%となっています。政府は、2023年度末までにほぼ全国民にマイナンバーカードが行き渡ることを目指しています。

マイナンバーカードの交付枚数の推移

出典:総務省 マイナンバーカード交付状況について(令和3年6月1日時点)

携帯電話の契約時にマイナンバーカードを必須化することで、国民のカード取得が加速すると期待されています。また、健康保険証としての利用開始やマイナポイント事業など、カードの利便性を高める取り組みも進められています。

今後、マイナンバーカードは、行政手続きのオンライン化、医療分野でのデータ活用、民間サービスとの連携など、さまざまな場面で活用が広がっていくでしょう。カードの普及は、デジタル社会の基盤づくりに欠かせない要素となっています。

2. 背番号制度への賛成意見

2.1 利便性の向上

マイナンバー制度の最大のメリットは、行政手続きの効率化と国民の利便性向上です。マイナンバーを活用することで、行政機関間のデータ連携が進み、添付書類の削減や手続きのワンストップ化が可能となります。

例えば、児童手当の申請では、これまで住民票や所得証明書などの提出が必要でしたが、マイナンバーを使えば、そうした書類の提出が不要になります。年金の手続きでも、複数の行政機関にまたがる手続きがワンストップで完了するようになります。

また、行政サービスのオンライン化も進みます。マイナポータルを通じて、各種申請や行政機関からのお知らせの確認などがオンラインで行えるようになります。コンビニエンスストアでの各種証明書の取得も、マイナンバーカードがあれば可能となります。

民間サービスとの連携も期待されています。例えば、銀行口座とマイナンバーを紐づけることで、口座開設の手続きが簡素化されます。また、確定申告の際に、銀行や証券会社から必要な情報を自動的に取得できるようになります。

以下は、マイナンバー制度による利便性向上の具体例です。

  • 児童手当の申請:住民票や所得証明書などの提出が不要に
  • 年金の手続き:複数の行政機関にまたがる手続きがワンストップで完了
  • 行政サービスのオンライン化:マイナポータルを通じた各種申請やお知らせの確認
  • コンビニでの証明書取得:マイナンバーカードがあれば、住民票などの証明書が取得可能
  • 銀行口座との連携:口座開設の手続きが簡素化、確定申告に必要な情報を自動取得

このように、マイナンバー制度は、行政手続きの効率化と国民の利便性向上に大きく寄与すると期待されているのです。

2.2 カード偽造リスクとのトレードオフ

一方で、マイナンバーカードの偽造リスクを懸念する声もあります。カードに搭載されたICチップの複製や、なりすましによる不正利用の可能性が指摘されています。

たしかに、100%安全なシステムはありえません。高度な技術を駆使すれば、どんなセキュリティも突破される可能性はゼロではありません。マイナンバーカードについても、偽造のリスクを完全に排除することは難しいでしょう。

ただし、カードの偽造リスクは、利便性の向上とのトレードオフの関係にあります。リスクをゼロにするためには、利便性を大きく損なわざるを得ません。逆に、利便性を追求するあまり、安全性が脅かされるのも本末転倒です。

大切なのは、リスクと利便性のバランスをとることです。マイナンバーカードの場合、先に述べたようなセキュリティ対策を施すことで、偽造のリスクを限りなく低くすることが可能です。その上で、利便性を高めるための工夫を重ねることが求められます。

政府は、マイナンバーカードの普及に向けて、安全性と利便性の両立を図っています。今後は、国民の理解を得ながら、より安心して使えるカードづくりを進めていく必要があるでしょう。

3. 高齢者への影響

3.1 デジタル化への対応の難しさ

マイナンバーカードの普及は、社会全体のデジタル化を促進する一方で、デジタル機器の利用に不慣れな高齢者にとっては、新たな課題をもたらします。

内閣府の調査によると、60歳以上の高齢者のインターネット利用率は、他の年代と比べて低い水準にとどまっています。スマートフォンの所有率も、60代で約60%、70代以上では約30%と、若年層との差が大きくなっています。

年代別インターネット利用率とスマートフォン所有率

出典:総務省 令和2年版 情報通信白書

高齢者がデジタル機器の利用に不慣れな理由としては、以下のような点が挙げられます。

  • 必要性を感じていない:これまでアナログな方法で問題なく生活できていたため、デジタル化のメリットを実感しにくい
  • 操作が難しい:新しい機器の操作方法を覚えるのが面倒、マニュアルが分かりにくいなど
  • 身体的な制約:視力の低下や手指の動きが鈍くなることで、操作がしづらくなる
  • 経済的な理由:デジタル機器の購入やインターネット接続にかかる費用負担が大きい

こうした状況を踏まえると、マイナンバーカードの利用を高齢者に一律に求めるのは難しい面があります。カードの取得や利用方法について、丁寧な説明と支援が必要となるでしょう。

3.2 若者世代とのデジタルデバイドの深刻化

高齢者のデジタル化への対応が遅れる一方で、若者世代ではスマートフォンの利用が当たり前となり、デジタルデバイドが深刻化しています。

若者世代は、オンラインショッピングや行政手続きのデジタル化など、生活のあらゆる場面でデジタル技術を活用しています。スマートフォンを使いこなし、新しいサービスを次々と取り入れています。

一方、高齢者の中には、デジタル化の波に取り残され、日常生活に不便を感じている人も少なくありません。買い物や行政手続きなど、これまでアナログな方法で行ってきたことが、次第にデジタル化されていくことで、戸惑いを感じているのです。

デジタルデバイドは、単なる世代間の問題にとどまりません。情報へのアクセスや行政サービスの利用など、生活の質に直結する問題でもあります。デジタル社会の恩恵を、世代を問わず、すべての人が享受できるようにしていく必要があります。

そのためには、高齢者のデジタル活用を支援する取り組みが欠かせません。行政や地域社会が連携し、きめ細かなサポート体制を整備していくことが求められます。

3.3 過疎地域の高齢者が直面する問題

過疎地域に住む高齢者は、都市部の高齢者とは異なる課題に直面しています。人口減少と高齢化が進む中で、生活に必要なサービスを受けることが難しくなっているのです。

3.3.1 行政サービスへのアクセス

過疎地域では、行政サービスの拠点が統廃合され、高齢者が窓口を訪れるのが困難になっています。バスなどの公共交通機関も便数が減り、自家用車を運転できない高齢者は、移動手段の確保に苦労しています。

マイナンバーカードを活用したオンライン手続きは、こうした問題の解決に役立つ可能性があります。自宅にいながら、必要な手続きを済ませることができるからです。

ただし、過疎地域では、インターネット環境の整備が遅れている地域も少なくありません。オンライン手続きを行うための基盤づくりが求められます。

3.3.2 医療アクセスの不利

過疎地域では、医療機関の数が限られ、高齢者が必要な医療を受けるのが難しい状況にあります。特に専門的な治療が必要な場合は、遠方の病院まで通わなければならず、大きな負担となっています。

マイナンバーカードを健康保険証として利用することで、こうした問題の解決

が期待されています。医療機関での受付手続きがスムーズになるほか、オンラインでの診療予約や処方箋の発行なども可能になります。

また、マイナンバーカードを活用して、医療情報を一元的に管理することも検討されています。これにより、過去の診療記録や投薬歴などを、かかりつけ医以外の医療機関でも確認できるようになります。緊急時の適切な治療にもつながるでしょう。

ただし、医療情報の管理には、セキュリティ面での課題もあります。個人情報の保護と活用のバランスをどう取るかが問われています。

4. 求められる対策

4.1 高齢者へのデジタル活用支援

マイナンバーカードの普及を進める上で、高齢者へのデジタル活用支援が欠かせません。具体的には、以下のような取り組みが求められます。

  • 分かりやすい説明資料の作成:マイナンバーカードの利用方法について、図解入りの分かりやすい説明資料を用意する。
  • 対面でのサポート体制の充実:市区町村の窓口や公民館などで、マイナンバーカードの申請や利用方法について、対面でサポートを行う。
  • オンラインでの相談対応:マイナンバーカードに関する問い合わせに、オンラインチャットや電話で対応する。
  • 利用者の声を反映した改善:高齢者の利用状況を把握し、そのフィードバックをシステムの改善に活かす。

こうした取り組みを通じて、高齢者が抵抗感なくマイナンバーカードを利用できる環境を整備していく必要があります。

4.2 過疎地域への行政サービス・医療アクセス改善

過疎地域の高齢者が直面する問題に対しては、行政サービスと医療アクセスの改善が求められます。

行政サービスについては、以下のような対策が考えられます。

  • 出張サービスの拡充:市区町村の職員が、定期的に過疎地域を訪問し、行政手続きのサポートを行う。
  • オンライン手続きの簡素化:マイナンバーカードを活用したオンライン手続きを、高齢者でも利用しやすいよう簡素化する。
  • 公共交通機関の利便性向上:デマンド交通の導入など、過疎地域の実情に合った公共交通サービスを提供する。

医療アクセスについては、以下のような対策が考えられます。

  • 遠隔診療の普及:オンラインでの診療を推進し、過疎地域の高齢者が自宅で医療を受けられるようにする。
  • 訪問診療の拡充:医師や看護師が、定期的に過疎地域を訪問し、診療や健康管理のサポートを行う。
  • 医療情報の共有:マイナンバーカードを活用して、過疎地域の医療機関間で患者情報を共有し、切れ目のない医療提供を実現する。

行政と医療機関、地域社会が連携し、過疎地域の高齢者を支える体制を構築していくことが重要です。

4.3 若者世代の利便性と高齢者支援のバランス

マイナンバーカードの普及に当たっては、若者世代の利便性と高齢者支援のバランスを取ることが大切です。

デジタル化の恩恵を享受したい若者世代の要望に応えつつ、デジタル化になじみの薄い高齢者にも配慮する必要があります。

そのためには、利用者の属性に応じた多様な選択肢を用意することが有効でしょう。オンラインでの手続きを基本としつつ、窓口での対面手続きも残す。スマートフォンでの利用を想定しつつ、パソコンでの利用も可能にする。このように、利用者の事情に合わせた柔軟な対応が求められます。

また、高齢者のデジタル活用を支援する取り組みは、若者世代にとってもメリットがあります。将来、自分自身が高齢者になったとき、どのような社会であってほしいか。そのような長期的な視点を持つことが大切です。

世代を超えて、誰もが暮らしやすいデジタル社会を実現するには、若者と高齢者が互いに理解し、支え合うことが欠かせません。マイナンバーカードの普及は、そのための試金石となるでしょう。

5. 背番号制度をめぐる議論

5.1 賛成意見と反対意見

マイナンバー制度をめぐっては、これまで賛成意見と反対意見が交錯してきました。

賛成意見としては、以下のような点が挙げられます。

  • 行政の効率化:マイナンバーを活用することで、行政機関間の情報連携が進み、事務処理の効率化が図られる。
  • 公平な社会保障:所得や資産の把握が正確になることで、社会保障の公平性が高まる。
  • 利便性の向上:行政手続きのワンストップ化や、民間サービスとの連携により、国民の利便性が向上する。

一方、反対意見としては、以下のような点が挙げられます。

  • プライバシーの侵害:マイナンバーにより、個人情報が政府に集約されることへの懸念がある。
  • 情報漏洩のリスク:マイナンバーに関する情報が漏洩した場合、悪用される恐れがある。
  • 制度の複雑さ:マイナンバー制度の仕組みが複雑で、国民に十分理解されていない。

こうした賛否両論を踏まえ、マイナンバー制度のあり方を検討していく必要があります。プライバシー保護と利便性の向上をどう両立するか。国民の理解をどう得ていくか。丁寧な議論が求められます。

5.2 将来を見据えた建設的な議論の必要性

マイナンバーカードの普及は、日本社会の将来を左右する重要な課題です。短期的な視点だけでなく、長期的な展望を持って議論することが大切です。

デジタル化の波は、今後ますます加速していくでしょう。社会のあり方も大きく変わっていく可能性があります。マイナンバー制度は、そうした変化に対応するための基盤となり得ます。

一方で、デジタル化がもたらす影響は、必ずしも望ましいものばかりではありません。情報格差の拡大や、プライバシー侵害など、負の側面にも目を向ける必要があります。

マイナンバー制度の是非を判断するには、こうしたデジタル社会の光と影を見極める必要があります。技術的な可能性と、社会的な受容性のバランスを探ることが求められます。

建設的な議論を重ねることで、マイナンバー制度への国民の理解は深まっていくはずです。将来世代にとって、より良い社会を築くための知恵を結集したいものです。

参考リンク

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