05.30

iPhoneのウォレットアプリにマイナンバーカード搭載へ
日本が米国以外で初の展開、2025年春後半から利用可能に
アップルは5月30日、日本のデジタル庁と協力し、2025年春の後半からiPhoneの「ウォレット」アプリでマイナンバーカードを利用できるよう準備を進めていることを発表した。アップルがウォレットの身分証明書機能を米国以外で展開するのは日本が初となる[12]。
マイナンバーカードを持つ日本の居住者は、来春後半以降、iPhoneのウォレットアプリにマイナンバーカードを追加し、対面またはiOSアプリ上で安全に提示できるようになる。物理的なマイナンバーカードと同様に、コンビニエンスストアで公的な証明書等を発行したり、政府の「マイナポータル」iOSアプリにアクセスしてオンラインの行政サービスを受けることができる[12][16]。
アップルのApple PayおよびAppleウォレット担当バイスプレジデントのジェニファー・ベイリー氏は「Appleウォレットの身分証明書機能の米国外への展開は、従来の物理的な財布を、簡単かつ安全で、プライベートなモバイルウォレットに置き換えるという私たちのビジョンにおいて重要なステップです。iPhoneに組み込まれたセキュリティとプライバシー保護の機能を最大限に活用しながら、身分証明書を提示するシームレスで便利な方法を日本に住むみなさんに提供することを大変嬉しく思います」とコメントしている[12]。
Face IDとTouch IDで安全に本人確認
ウォレットアプリのマイナンバーカードでは、物理的なカードを取り出したりデバイスを人に渡したりすることなく、iPhoneに身分証明書を追加して提示できる。利用者はウォレットを開いて自分のマイナンバーカードを選択し、iPhoneのサイドボタンをダブルクリックして、Face IDまたはTouch IDで認証する。そして非接触型のIDカードリーダーにiPhoneをかざすだけで、対面で身分証明書を提示できるようになる[13][16]。
iPhoneのFace IDとTouch IDによる生体認証は、業界最高水準のセキュリティを提供する。セキュアエンクレーブと呼ばれる専用のハードウェアチップ内で生体情報が保護され、iPhoneの他の部分やアップルのサーバーにアクセスできない仕組みになっている。
マイナンバーカードをウォレットアプリに追加する際も、カードの情報はiPhone内に暗号化されて保存され、アップルがその情報にアクセスすることはない。iPhoneを紛失した場合でも、遠隔からロックやデータ消去ができるため、悪用のリスクは最小限に抑えられる[12]。
官民のサービスで幅広く活用
ウォレットアプリのマイナンバーカードは、病院や医療機関、コンビニエンスストアなど、物理的なマイナンバーカードが利用できる場所で提示できるようになる。政府の「マイナポータル」iOSアプリなど、特定のアプリでも提示可能だ[13]。
現在、日本では1億人以上の国民がマイナンバーカードを申請しており、官民の様々なオンラインサービスや全国約6万店のコンビニで行政サービスを受けられるほか、災害時の本人確認などにも利用されている。デジタル庁は、マイナンバーカードのスマートフォン搭載によって、国民の利便性がさらに高まると期待を寄せている[12]。
一方、マイナンバーカードの不正利用への懸念も根強い。アップルは最新のセキュリティ規格に準拠し、iPhoneならではの高度な保護機能を活用することで、安全性の確保に努めるとしている[13]。
各国でデジタルIDの取り組みが加速
スマートフォンを使ったデジタルIDは世界的な潮流になりつつある。欧州連合(EU)は2021年、加盟国に対してデジタルIDウォレットの提供を義務付ける規則案を公表。2030年までに人口の8割への普及を目指している[14]。
米国でも複数の州がアップルやグーグルと提携し、ウォレットアプリへの運転免許証の搭載を進めている。ただし州をまたいだ相互運用性はまだ確立されていない[14][15]。
インドは国民識別番号Aadhaarと連携した文書管理プラットフォーム「DigiLocker」を運用。モバイルアプリから各種証明書にアクセスできる[15]。
日本のマイナンバーカードは、国を挙げたデジタル化の象徴的な存在だ。スマートフォンへの搭載は大きな節目となるだろう。ただし国民の信頼を得るには、利便性と安全性の両立が不可欠だ。アップルとデジタル庁の協力に大きな期待がかかる。
社会のデジタル化を後押しするか
マイナンバーカードのスマートフォン搭載は、日本社会のデジタル化を大きく前進させる可能性を秘めている。スマートフォンが身分証明書を兼ねることで、行政手続きのオンライン化が一気に加速するかもしれない。
民間サービスでの活用も広がりそうだ。将来的には、スマートフォンをかざすだけでホテルにチェックインしたり、レンタカーを借りたりできる日が来るかもしれない[14]。
一方で課題も残る。マイナンバーカードへの国民の理解はまだ十分とは言えず、普及率は6割程度にとどまっている。スマートフォンを持たない高齢者などへの配慮も欠かせない[12]。
セキュリティ対策も引き続き重要だ。アップルは定評あるセキュリティ技術を投入するが、国民の個人情報を預かる以上、緊張感を持って臨む必要がある。
それでも、マイナンバーカードのiPhone搭載は、日本のデジタル化の大きな一歩になるだろう。国民の利便性が高まり、行政の効率化が進めば、社会全体の生産性向上にもつながる。
政府とアップルが協力し、国民に丁寧に説明しながら、着実に取り組みを進めていくことが肝要だ。日本から始まるウォレットの身分証明書機能が、世界のデジタルID普及の先駆けとなることにも期待したい。
まとめ
- アップルは2025年春後半、日本でマイナンバーカードのiPhoneウォレット搭載を開始へ。米国以外では初
- Face IDとTouch IDで安全に本人確認。店頭でもオンラインでも身分証明書として利用可能に
- 1億人以上が申請するマイナンバーカードの利便性が向上。官民のサービスで活用の場が広がる
- 各国でデジタルIDの取り組みが加速。日本の動きは世界をリードする可能性も
- 利便性と安全性の両立がカギ。政府とアップルの協力に期待
マイナンバーカードのiPhone搭載は、日本のデジタル化の象徴的なプロジェクトだ。国民の理解を得ながら、着実に進めていくことが求められる。日本の経験が、世界のデジタルID普及の先例となることにも期待が高まる。
Citations:
[1] https://support.apple.com/ja-jp/guide/iphone/iph9f1847064/ios
[2] https://www.macrumors.com/2024/05/29/japan-my-number-card-apple-wallet/
[3] https://support.apple.com/ja-jp/118237
[4] https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01679/070600121/
[5] https://www.watch.impress.co.jp/docs/series/suzukij/1572808.html
[6] https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN300XB0Q4A530C2000000/
[7] https://www.watch.impress.co.jp/docs/news/1595929.html
[8] https://support.apple.com/ja-jp/guide/security/secc50cff810/web
[9] https://k-tai.watch.impress.co.jp/docs/news/1405217.html
[10] https://qiita.com/kkoiwai/items/9b4b224dbfeeb732cacc
[11] https://www.apple.com/jp/newsroom/2024/05/apple-introduces-tap-to-pay-on-iphone-in-japan/
[12] https://www.apple.com/jp/newsroom/2024/05/apple-announces-first-international-expansion-of-ids-in-apple-wallet-in-japan/
[13] https://japan.cnet.com/article/35219477/
[14] https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/02703/122700005/
[15] https://tech.gmogshd.com/digitalidwallet/
[16] https://news.yahoo.co.jp/articles/916d5386f0d237a1d99c32d6e0d62499bd2378aa
[17] https://appllio.com/news/2024-05-30-51221-iphone-wallet-mynumber-card
[18] https://news.mynavi.jp/article/20240530-2955614/
[19] https://news.yahoo.co.jp/articles/f09a562b4a40330b817a76562a74c26a32d951cf
[20] https://wired.jp/2021/07/03/apple-wallet-drivers-license-digital-id/
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