05.31

NAS用HDDの選び方と注意点
1. HDDの容量選び
1.1 容量の需要予測
NASのHDDを選ぶ際、最も重要な点は必要な容量を正しく見積もることです。HDDの容量が足りないと、データを保存できなくなる可能性があります。一方で無駄に大きな容量を選ぶと、コストがかさみます。
ここでは、HDDの容量を決める際の考え方を説明します。
- 現在の必要容量 – すでに保存しているデータの総量を確認します。
- 将来の増加予測 – 今後何年間使用するかを想定し、年間のデータ増加量を見積もります。写真/動画のデータ量は年々増加する傾向にあります。
- レッドンダンシー – RAIDを構成する場合、パリティ情報の分だけ実際の使用可能容量が減ります。RAID 5ならディスク1台分、RAID 6なら2台分の容量が必要になります。
- 予備領域の確保 – HDDが一杯になると、パフォーマンスが低下します。安全を見て、実際に必要な容量よりも20%程度余裕を持たせることをおすすめします。
これらの要素を総合的に勘案し、必要最小限の容量を選びましょう。
1.2 8TBと10TBの比較
現時点で、NAS向けの一般的な大容量HDDは8TBと10TBが主流です。価格は10TBの方が高くなりますが、将来の拡張性を考えると10TBが有利です。
- 8TBの場合、4台で32TBの容量が構成できます。RAID 6を想定すると、実際の使用可能容量は24TBになります。
- 10TBの場合は、4台で40TBの容量が構成できます。RAID 6だと30TBが使用可能です。
8TBでも十分な場合もありますが、長期的に見れば10TBを選ぶメリットは大きいでしょう。
2. HDDの種類の選び方
2.1 NAS専用HDDの特徴
NASに適したHDDを選ぶ上で、NAS専用HDDには次のような特徴があります。
- 24時間365日運転を前提とした高信頼性設計
- ビデオ録画に適した連続転送性能の強化
- 低消費電力モード
- ワークロードの自動チューニング機能
- 高い静音性
一般的なデスクトップ用HDDは、こうした特性を備えていないため、NASには不向きです。
2.2 メーカー別ラインナップ
主要HDDメーカーから、NAS向けに特化した製品ラインナップが用意されています。
- Western Digital – WD Redシリーズ
- Seagate – IronWolfシリーズ
- Toshiba – N300シリーズ
これらのNAS専用HDDの中から、必要な容量と価格を比較して選びましょう。
2.3 CMR vs SMRの違い
HDDには、CMR(Conventional Magnetic Recording)方式とSMR(Shingled Magnetic Recording)方式の2種類があります。
- CMR – 従来の記録方式で、ディスク上のトラックが重ならない。ランダム読み書きに適している。
- SMR – トラックが重なるため高密度記録が可能だが、ランダム読み書きのパフォーマンスが低下する。
NAS用途ではランダムアクセスが多いため、基本的にはCMRのHDDを選ぶべきです。SMRはコストパフォーマンスに優れるため、ストリーミング再生などの用途に適しています。
3. 中古・整備品HDDの利用
3.1 中古HDDの利点と欠点
中古・整備品のHDDを選ぶメリットは、新品に比べてコストが抑えられる点です。一方で、使用期間が長くなるほど故障のリスクは高くなります。
- メリット – 新品に比べて割安、環境に優しい
- デメリット – 故障リスクが高い、サポート期間が短い、バルク品で製品保証がない
中古品を選ぶ場合は、十分な注意が必要です。
3.2 整備品HDDとは
整備品HDDとは、メーカーで再生処理された中古品のことです。
- 初期化や診断テストを経て、問題のあるHDDは排除される
- 新品同様の製品保証が付帯する場合がある
- 新品に比べてコストが30~50%程度安い
整備品HDDは、中古品に比べて安心して使えますが、新品ほどの信頼性は望めません。
3.3 整備品の選び方
整備品HDDを選ぶ際は、次の点に注意しましょう。
- 製品保証の有無 – 保証期間が長いほど安心
- 製造時期 – 新しい方が残存寿命が長い
- 評価・レビュー – 信頼できる販売店を選ぶ
- 価格の適正さ – 新品の50~70%程度が適正価格
整備品を選ぶメリットは価格ですが、安すぎる製品は避けた方が賢明です。
4. HDDの設置と運用
4.1 HDDの取り扱い
HDDは精密機器なので、取り扱いには細心の注意を払う必要があります。
- 振動や衝撃を与えない
- 静電気に注意する
- 温度変化を避ける
- 化学物質に触れさせない
HDDを設置する際は、メーカーの指示に従って作業しましょう。
4.2 RAIDの構成
NASにHDDを複数台搭載する場合、RAIDを構成することをおすすめします。
- RAID 1 – 2台のHDDでミラーリングを構成。冗長性が高い。
- RAID 5 – 3台以上のHDDで、パリティ情報を1台分確保。
- RAID 6 – 4台以上のHDDで、パリティ情報を2台分確保。
RAID 5以上を構成することで、HDDが故障してもデータを守ることができます。
4.3 HDDの交換時期
HDDは消耗品なので、いずれ交換が必要になります。交換の目安は以下の通りです。
- メーカー保証期間 – 通常3~5年程度
- S.M.A.R.T.値の変化 – 値が低下すれば交換を検討
- エラー発生の頻度 – エラーが出始めたら交換時期
- 運用年数 – 5年以上経過したら交換を検討
HDDの交換は、データのバックアップを取った上で行いましょう。
5. NASの選び方
5.1 NASの用途
NASを選ぶ際は、まずその用途を明確にする必要があります。
- 単なるデータ保存 – 低コストなエントリーモデルで十分
- メディアサーバー – 4K動画の再生に対応した高性能モデル
- バックアップ – RAID 5/6を構成できるベイ数の多いモデル
用途に合わせてNASのスペックを選びましょう。
5.2 必要なベイ数
NASに搭載できるHDD/SSDの数は、ベイ数によって決まります。
- 2ベイ – ミラーリングの RAID 1 が構成できる
- 4ベイ – RAID 5 または RAID 6 が構成できる
- 8ベイ以上 – 大容量の RAID 6 が構成できる
ベイ数が多いほど、大容量の冗長構成が可能になります。
5.3 NASの性能
NASの性能を決める主な要素は、CPUとメモリ容量です。
- CPU – クロック数が高いほど高性能
- メモリ – 容量が大きいほど高速
- Ethernet – 1GbEよりも10GbEの方が高速
動画の再生や複数人での同時アクセスを想定する場合は、高性能なNASを選びましょう。
まとめ
NASのHDDを選ぶ際は、必要な容量を正確に見積もることが最も重要です。8TBと10TBを比較すると、10TBの方が将来の拡張性は高くなります。HDDの種類は、NAS専用のCMRタイプを選ぶのが賢明です。
中古品や整備品を選ぶ場合は、製品保証の有無や製造時期をチェックしましょう。HDDの取り扱いには細心の注意を払い、RAIDを構成してデータの冗長性を確保することをおすすめします。
NASの選定では、用途に合わせてベイ数や性能を検討する必要があります。NASとHDDを上手に組み合わせることで、安心して長期間使い続けられるストレージ環境が構築できます。

引用URL
- How future proof is the 10TB disk size compared to a 8TB disk size?
- Question – Ironwolf 8TB vs 10TB+ NAS HDDs
- Starting off with new 4 bay NAS – 8TB or 10TB
- HGST Ultrastar He12 HUH721212ALE600 12TB ハードドライブ
- Customer Reviews: WD BLACK Gaming 10TB Internal SATA Hard Drive for Desktops
- HGST – Wikipedia
- Western Digital Red 10TB And 8TB NAS HDD Review
- Seagate 8 TB disk warnings
- 10TB vs 8TB WD Red Plus HDD – Which one is better for NAS?
- RN424 , 4x 8TB WD Red Plus failing after 120 days?
- Seagate BarraCuda SATA (2-4TB, 6TB, 8TB) Product Manual
- HGST – Wikipedia
- WD Red 10TB Review
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