2024
05.31

NAS用HDDの選び方と注意点

IT・デジタル, テクノロジー

1. HDDの容量選び

1.1 容量の需要予測

NASのHDDを選ぶ際、最も重要な点は必要な容量を正しく見積もることです。HDDの容量が足りないと、データを保存できなくなる可能性があります。一方で無駄に大きな容量を選ぶと、コストがかさみます。

ここでは、HDDの容量を決める際の考え方を説明します。

  • 現在の必要容量 – すでに保存しているデータの総量を確認します。
  • 将来の増加予測 – 今後何年間使用するかを想定し、年間のデータ増加量を見積もります。写真/動画のデータ量は年々増加する傾向にあります。
  • レッドンダンシー – RAIDを構成する場合、パリティ情報の分だけ実際の使用可能容量が減ります。RAID 5ならディスク1台分、RAID 6なら2台分の容量が必要になります。
  • 予備領域の確保 – HDDが一杯になると、パフォーマンスが低下します。安全を見て、実際に必要な容量よりも20%程度余裕を持たせることをおすすめします。

これらの要素を総合的に勘案し、必要最小限の容量を選びましょう。

1.2 8TBと10TBの比較

現時点で、NAS向けの一般的な大容量HDDは8TBと10TBが主流です。価格は10TBの方が高くなりますが、将来の拡張性を考えると10TBが有利です。

  • 8TBの場合、4台で32TBの容量が構成できます。RAID 6を想定すると、実際の使用可能容量は24TBになります。
  • 10TBの場合は、4台で40TBの容量が構成できます。RAID 6だと30TBが使用可能です。

8TBでも十分な場合もありますが、長期的に見れば10TBを選ぶメリットは大きいでしょう。

2. HDDの種類の選び方

2.1 NAS専用HDDの特徴

NASに適したHDDを選ぶ上で、NAS専用HDDには次のような特徴があります。

  • 24時間365日運転を前提とした高信頼性設計
  • ビデオ録画に適した連続転送性能の強化
  • 低消費電力モード
  • ワークロードの自動チューニング機能
  • 高い静音性

一般的なデスクトップ用HDDは、こうした特性を備えていないため、NASには不向きです。

2.2 メーカー別ラインナップ

主要HDDメーカーから、NAS向けに特化した製品ラインナップが用意されています。

  • Western Digital – WD Redシリーズ
  • Seagate – IronWolfシリーズ
  • Toshiba – N300シリーズ

これらのNAS専用HDDの中から、必要な容量と価格を比較して選びましょう。

2.3 CMR vs SMRの違い

HDDには、CMR(Conventional Magnetic Recording)方式とSMR(Shingled Magnetic Recording)方式の2種類があります。

  • CMR – 従来の記録方式で、ディスク上のトラックが重ならない。ランダム読み書きに適している。
  • SMR – トラックが重なるため高密度記録が可能だが、ランダム読み書きのパフォーマンスが低下する。

NAS用途ではランダムアクセスが多いため、基本的にはCMRのHDDを選ぶべきです。SMRはコストパフォーマンスに優れるため、ストリーミング再生などの用途に適しています。

3. 中古・整備品HDDの利用

3.1 中古HDDの利点と欠点

中古・整備品のHDDを選ぶメリットは、新品に比べてコストが抑えられる点です。一方で、使用期間が長くなるほど故障のリスクは高くなります。

  • メリット – 新品に比べて割安、環境に優しい
  • デメリット – 故障リスクが高い、サポート期間が短い、バルク品で製品保証がない

中古品を選ぶ場合は、十分な注意が必要です。

3.2 整備品HDDとは

整備品HDDとは、メーカーで再生処理された中古品のことです。

  • 初期化や診断テストを経て、問題のあるHDDは排除される
  • 新品同様の製品保証が付帯する場合がある
  • 新品に比べてコストが30~50%程度安い

整備品HDDは、中古品に比べて安心して使えますが、新品ほどの信頼性は望めません。

3.3 整備品の選び方

整備品HDDを選ぶ際は、次の点に注意しましょう。

  • 製品保証の有無 – 保証期間が長いほど安心
  • 製造時期 – 新しい方が残存寿命が長い
  • 評価・レビュー – 信頼できる販売店を選ぶ
  • 価格の適正さ – 新品の50~70%程度が適正価格

整備品を選ぶメリットは価格ですが、安すぎる製品は避けた方が賢明です。

4. HDDの設置と運用

4.1 HDDの取り扱い

HDDは精密機器なので、取り扱いには細心の注意を払う必要があります。

  • 振動や衝撃を与えない
  • 静電気に注意する
  • 温度変化を避ける
  • 化学物質に触れさせない

HDDを設置する際は、メーカーの指示に従って作業しましょう。

4.2 RAIDの構成

NASにHDDを複数台搭載する場合、RAIDを構成することをおすすめします。

  • RAID 1 – 2台のHDDでミラーリングを構成。冗長性が高い。
  • RAID 5 – 3台以上のHDDで、パリティ情報を1台分確保。
  • RAID 6 – 4台以上のHDDで、パリティ情報を2台分確保。

RAID 5以上を構成することで、HDDが故障してもデータを守ることができます。

4.3 HDDの交換時期

HDDは消耗品なので、いずれ交換が必要になります。交換の目安は以下の通りです。

  • メーカー保証期間 – 通常3~5年程度
  • S.M.A.R.T.値の変化 – 値が低下すれば交換を検討
  • エラー発生の頻度 – エラーが出始めたら交換時期
  • 運用年数 – 5年以上経過したら交換を検討

HDDの交換は、データのバックアップを取った上で行いましょう。

5. NASの選び方

5.1 NASの用途

NASを選ぶ際は、まずその用途を明確にする必要があります。

  • 単なるデータ保存 – 低コストなエントリーモデルで十分
  • メディアサーバー – 4K動画の再生に対応した高性能モデル
  • バックアップ – RAID 5/6を構成できるベイ数の多いモデル

用途に合わせてNASのスペックを選びましょう。

5.2 必要なベイ数

NASに搭載できるHDD/SSDの数は、ベイ数によって決まります。

  • 2ベイ – ミラーリングの RAID 1 が構成できる
  • 4ベイ – RAID 5 または RAID 6 が構成できる
  • 8ベイ以上 – 大容量の RAID 6 が構成できる

ベイ数が多いほど、大容量の冗長構成が可能になります。

5.3 NASの性能

NASの性能を決める主な要素は、CPUとメモリ容量です。

  • CPU – クロック数が高いほど高性能
  • メモリ – 容量が大きいほど高速
  • Ethernet – 1GbEよりも10GbEの方が高速

動画の再生や複数人での同時アクセスを想定する場合は、高性能なNASを選びましょう。

まとめ

NASのHDDを選ぶ際は、必要な容量を正確に見積もることが最も重要です。8TBと10TBを比較すると、10TBの方が将来の拡張性は高くなります。HDDの種類は、NAS専用のCMRタイプを選ぶのが賢明です。

中古品や整備品を選ぶ場合は、製品保証の有無や製造時期をチェックしましょう。HDDの取り扱いには細心の注意を払い、RAIDを構成してデータの冗長性を確保することをおすすめします。

NASの選定では、用途に合わせてベイ数や性能を検討する必要があります。NASとHDDを上手に組み合わせることで、安心して長期間使い続けられるストレージ環境が構築できます。

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