不動産登記に国籍届け出義務化へ 政府が2027年度運用開始

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政府、外国人の不動産所有状況を一元管理へ
出典:@livedoornews on X

日本政府は、外国人による不動産取得の実態を把握するため、登記時に国籍の届け出を義務付ける制度を導入する方向で調整を進めています。デジタル庁が管理するデータベースを活用し、2027年度からの運用を目指します。この取り組みは、マンション価格の高騰や投機目的の土地買い占めに対する国民の懸念を背景に、安全保障上の観点も加味したものです。本記事では、政府の計画詳細、背景、国際比較を通じた分析を解説し、今後の規制強化の可能性を探ります。

政府は、マンションや農地、森林、国境離島、防衛施設周辺などの不動産登記において、国籍の登録を義務化する仕組みを構築します。このデータベースはデジタル庁の「不動産ベース・レジストリ」を基盤とし、2027年度の運用開始を予定しています。なぜ今、この制度が注目されているかといえば、外国資本による不動産取得が増加し、国内住宅価格の高騰や水源地・重要施設周辺の土地取得が社会問題化しているためです。実際、2025年11月の調査では、東京都内の新築マンション取得で外国居住者の割合が3.0%に達し、都心6区では7.5%と上昇傾向を示しています。本記事の結論として、この制度は不動産市場の透明化を促進し、将来的な取得規制や課税強化につながる可能性が高い一方、プライバシー保護とのバランスが課題となります。

詳細事実

政府の調整内容は、2025年11月30日付の読売新聞報道で明らかになりました。内閣官房、法務省、デジタル庁などが連携し、データベースの構築を進めています。具体的な対象は以下の通りです。

  • マンションなどの一般不動産: 現行法では登記時に国籍の届け出が義務付けられていないため、新たに登録を義務化。売買や相続時の移転登記で国籍情報を提供します。
  • 農地・森林: 農地法や森林法に基づく届け出に国籍登録を追加。
  • 大規模土地取引: 国土利用計画法で定める一定面積以上の取引を対象。
  • 重要土地: 国境離島や防衛施設周辺の土地で、安全保障上の観点から外為法(外国為替及び外国貿易法)を適用。国外居住者や外国資金経由の法人取得もカバーします。

松本尚デジタル相は、2025年12月2日の閣議後会見で、「外国人による不動産所有状況を一元的に把握、管理するためのデータベースを活用する」と述べ、マンション登記での国籍登録導入を明らかにしました。運用開始は2027年度を予定し、2026年1月にも関係省庁が基本方針をまとめます。

野党側の動きも活発です。立憲民主党は2025年12月1日、衆院に「不動産取得実態調査法案」を提出しました。この法案は、土地や建物の取得・利用状況の政府調査を義務付け、登記情報に氏名に加え国籍の記載を義務化。法人の場合は代表者や株主の国籍も対象とし、使用目的や利用状況の把握を求めています。法案は外国人対象を明記せず、すべての取得者をカバーする形で、取得規制や課税の検討も盛り込んでいます。自民党と日本維新の会も類似の規制強化を検討しており、来年1月の外国人政策方針で方向性が決まる見込みです。

時系列で振り返ると、2024年4月1日から不動産登記法が改正され、外国人個人の氏名にローマ字併記が認められましたが、国籍登録は未導入でした。2025年11月21日の総合経済対策では、不動産取得実態調査費用が盛り込まれ、継続調査が決定。11月30日の政府調整報道、12月1日の立憲法案提出と、短期間で進展しています。

背景解説

この制度の背景には、外国資本による不動産取得の増加と、それに伴う社会的不安があります。日本では、WTO協定の影響で外国人の不動産取得に直接的な制限が少なく、ほぼ自由に購入可能です。一方、マンション価格の高騰が深刻化しており、2025年の国土交通省調査では、外国居住者の取得割合が前年比1.5ポイント上昇。投機目的の買い占めが国内住民の住宅取得を圧迫し、水源地や重要施設周辺の土地取得が安全保障上の懸念を呼んでいます。

関連する現行法として、外為法と重要土地等調査法があります。外為法は外国投資家による防衛施設周辺の取得を審査可能ですが、事前届け出は任意で実効性が低い。重要土地等調査法は2021年に施行され、国境離島や原発周辺の土地利用を調査・規制しますが、国籍把握の仕組みが不十分です。これらの法を補完する形で、新データベースが位置づけられます。

国民の安心を重視する観点から、政府は「実態が見えないことが不安につながっている」と判断。公明党の連立離脱後、こうした規制強化が加速したとの指摘もあります。X(旧Twitter)上の議論では、「公明党が癌だった」「ようやく改善」との声が多く、国民の関心の高さを示しています。

分析・考察

この取り組みの影響を多角的に分析します。まず、業界への影響です。不動産市場の透明化が進み、外国資本の投機が抑制される可能性があります。メリットとして、価格適正化が進み、国内住民の住宅アクセスが向上。デメリットは、行政負担の増加や、プライバシー侵害の懸念です。登記簿への国籍表示は慎重論があり、誰でも閲覧可能な公開範囲が議論されています。

他国との比較では、日本は規制が緩い部類です。以下に主要国の規制を表でまとめます。

国名規制内容対象導入年・背景
カナダ外国人による住宅購入を2年間禁止(2023年施行、2025年まで延長)。追加税も課税。住宅全般住宅価格高騰対策
オーストラリア外国人投資審査委員会の事前承認必須。新築住宅優先、既存住宅購入制限。住宅・農地住宅不足・投機抑制
シンガポール外国人に不動産価格の60%の追加印紙税(ABSD)。取得区域・用途制限。住宅・商業地住宅価格安定化
韓国外国人土地取得の事前承認制。首都圏・軍事施設周辺制限強化。土地全般安全保障・価格高騰対策
中国外国人取得を厳格制限。都市部で1戸のみ許可、自己居住目的限定。住宅投機抑制・国内優先
米国大統領が安全保障上の取引を停止可能(CFIUS審査)。州法で追加制限。農地・重要施設国家安全保障
ニュージーランド外国人住宅購入禁止(2018年)。投資ビザで一部緩和。住宅住宅価格高騰・外国人投機

日本はこれらに比べて制限が少なく、WTO協定遵守が理由ですが、国際的に見て規制強化の余地があります。例えば、カナダの禁止措置は住宅価格を5-10%抑制したとの報告があり、日本でも類似効果が期待されます。一方、ドイツや台湾のように特定区域限定の審査制を導入すれば、柔軟な対応が可能。メリットは国民の安心感向上と市場安定、デメリットは国際投資の減少による経済影響です。分析では、規制強化がGDPの0.5-1%程度の影響を与える可能性を指摘する研究もあります。

全体として、この制度は第一歩ですが、取得禁止や税制差の導入が次なるステップとなり得ます。グローバル化が進む中、日本独自のバランスが求められます。

  • 政府は2027年度から不動産登記に国籍届け出を義務化し、デジタル庁のデータベースで一元管理を開始。
  • 対象はマンション、農地、重要土地などで、外為法を活用した国外居住者・法人取得も把握。
  • 立憲民主党の法案は登記に国籍記載を義務付け、政府調査を推進。
  • 背景は投機懸念と価格高騰で、他国比較では日本規制の緩さが浮き彫り。
  • メリットは市場透明化と安心感向上、デメリットはプライバシーと行政負担。

今後の展望として、2026年1月の外国人政策方針で規制の詳細が決まり、取得禁止や課税強化の議論が進む見込みです。国際情勢の変化を注視しつつ、制度の効果検証が重要となります。

参考文献:

  • 読売新聞オンライン, 「外国人の不動産所有状況を一元管理、登記・国籍を登録…27年度にも運用へ政府調整」, 2025年11月30日.
  • 日本経済新聞, 「外国人の不動産取得を把握へ 政府、国籍情報のデータベース整備」, 2025年12月1日.
  • FNNプライムオンライン, 「立憲が外国人含め土地取得者の国籍を登記に記載義務づける「不動産取得実態調査法案」を提出」, 2025年12月1日.
  • 時事ドットコム, 「不動産登記「国籍」届け出へ 政府、外国人の所有把握」, 2025年12月1日.
  • 大和総研, 「主要国における住宅価格高騰とその対応策 ~外国人による購入規制を中心に~」, 2025年11月11日.
  • 国土交通省, 「外国に住所がある人の不動産取得に関する実態調査結果」, 2025年11月. [web:25 (引用ポスト)]
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