12.02
AI需要爆発でDRAM価格171%急騰 Q4も18〜23%上昇見込み
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AIブームがDRAM契約価格を前年比171%押し上げ、HBM需要が供給を逼迫。サムスン電子の最大60%値上げがNVIDIA GPU生産に影響、DDR4終了でPC市場波及。2026年まで高騰続く。
生成AIの急速な普及とデータセンターの拡大が、DRAM市場に深刻な供給逼迫を引き起こしています。2025年第3四半期のDRAM契約価格は前年同期比171.8%上昇し、史上最高水準に達しました。この急騰は、AI向け高帯域幅メモリ(HBM)の大量消費が汎用DRAMの生産を圧迫した結果です。特に、サムスン電子の最大60%値上げが市場全体を押し上げ、第4四半期のさらなる18〜23%上昇が予想されます。 本記事では、この価格動向の詳細、背景要因、業界への影響を分析し、2026年以降の展望を提示します。消費者向けPCやGPUの価格上昇が避けられない状況下で、市場参加者は供給確保の戦略転換を迫られています。
価格動向の詳細
DRAM市場の価格指標は、2025年を通じて急激な変動を示しています。TrendForceのデータによると、第3四半期の契約価格は前年比171.8%増となり、金価格の上昇率(約150%)を上回るペースです。 具体的には、サーバー向けDDR5 64GBモジュールの価格が前月比24%上昇し、338米ドルに達しました。一方、PC向けDDR4 8GBは31.5米ドル(前月比17%増)、DDR5 8GBは33.5米ドル(同25%増)と、世代交代が進む中で高価格化が顕著です。
第4四半期の見通しはさらに厳しく、TrendForceは当初のQoQ(前四半期比)8〜13%上昇から18〜23%へ上方修正しました。 サーバーDRAMは28〜33%の上昇、PC DRAMは25〜30%、モバイル向けLPDDRは38〜43%と予測され、供給不足が全セグメントに及んでいます。サムスン電子は9月以降、サーバーチップ価格を30〜60%引き上げ、業界全体の基準を押し上げました。 これにより、NVIDIAの次世代GPU(Blackwellシリーズ)生産が遅延する可能性が高まり、AIインフラ投資のボトルネックとなっています。
時系列で振り返ると、2025年上半期はAI需要の初期兆候としてHBM生産シフトが始まり、第3四半期に本格化。10月にはDDR5スポット価格が一週間で30%上昇し、11月に入りサムスンの値上げ発表が市場を震撼させました。 DDR4の生産終了も寄与しており、2025年末までに在庫が枯渇する見込みです。これらの数値は、Commercial TimesやReutersの報道に基づき、市場参加者の契約交渉を反映しています。
背景:AI需要とHBMの供給シフト
DRAM価格急騰の根本原因は、生成AIの爆発的需要にあります。ChatGPTのような大規模言語モデル(LLM)のトレーニングと推論(inference)では、膨大なデータ処理を支えるメモリ容量が不可欠です。HBMはGPUの高速データ転送を可能にし、NVIDIAのH100/H200で80GB以上を搭載しますが、1ユニットのHBM生産には従来DRAMの3倍のウェハー容量を要します。
メーカーの生産シフトが供給逼迫を加速させました。サムスン、SKハイニックス、Micronの3社が世界DRAM市場の95%を占め、これらがHBMとDDR5優先へ転換。SKハイニックスは2026年分のHBMを完売済みで、2027年契約を交渉中です。 hyperscaler(Meta、Google、OpenAI)はAIデータセンター構築で数百兆ウォンの投資を計画し、サーバーDRAM需要を50%押し上げています。中国市場では、HDD不足がSSD(NANDベース)需要を転嫁し、DRAM間接影響を増大させました。
仕組みとして、HBMはDRAMチップを複数層積層(12〜16層)し、シリコンインターポーザーでGPUと接続。帯域幅は3TB/s超ですが、歩留まりが低く生産コストが高いため、メーカーにとって高マージン商品です。従来のDDR4は低価格帯で消費者PC向けですが、AIシフトで生産ラインがHBMへ再配分され、在庫が急減。結果、契約形態が月次から半年〜1年単位の長期供給へ移行し、価格の安定性を失っています。
分析・考察:業界影響と多角的比較
この価格急騰は、半導体産業全体に波及効果を及ぼします。まず、GPU市場ではNVIDIAのBlackwell生産がHBM不足で2025年末まで遅延し、価格が10〜25%上昇する可能性があります。 消費者向けでは、自作PCのRAMコストが倍増し、完成品PCやノートPCの販売価格に5〜10%の転嫁が見込まれます。販売店は「今が買い時」と呼びかけ、在庫確保を急いでいます。
他社比較では、SKハイニックスがHBM市場シェア30%超で優位。サムスンはDRAM全体で首位ですが、HBM遅れが弱点です。MicronはHBM3E供給を拡大中ですが、3社合計で2026年の供給ギャップ80%超と推定されます。 メリットとして、メーカーの粗利益率が50%から75%へ向上し、株価は新高値を更新。デメリットは、消費者価格上昇による需要抑制リスクと、過剰投資による2027年供給過多の可能性です。
グローバル視点では、米国hyperscalerの投資が主導ですが、中国のYMTC(長江存儲)がNANDで50%需要しか満たせず、Androidスマホ市場のシェア変動を招きます。 過去の2018年クラウドサイクル(DRAMピーク1.25ドル/Gb)と比較し、今回AI主導で価格感応度が低く、ピークが上回る見込みです。環境面では、HBM生産の電力消費増がサステナビリティ課題を生みます。
| 項目 | 2025年Q3実績 | 2025年Q4見込み | 2026年予測 |
|---|---|---|---|
| DRAM契約価格YoY | +171.8% | +18〜23% (QoQ) | +20〜50% (年間) |
| HBMシェア (ビット) | 5% | 10%超 | 15%超 |
| DDR5プレミアム | +6% (vs DDR4) | +13% | +20%超 |
| サーバー需要増 | +50% (YoY) | +30% (QoQ) | +40% (YoY) |
この表はTrendForceとMorgan Stanleyのデータを基に、AI駆動の構造変化を示しています。
結論
- DRAM契約価格はAI需要で前年比171.8%上昇し、第4四半期も18〜23%の高騰が続く。
- HBM生産シフトとDDR4終了が供給逼迫を招き、サムスンの60%値上げがNVIDIA GPUに影響。
- PC・GPU市場に価格波及、販売店は即時購入を推奨。
- メーカー利益率向上も、消費者コスト増大と供給リスクが課題。
今後の展望として、2026年まで上昇圧力が継続し、DRAM供給ギャップが80%超える可能性があります。注視すべきは、hyperscalerの長期契約動向とHBM4移行です。AIインフラ投資が拡大する中、メモリメーカーの収益超サイクルが業界再編を促すでしょう。
参考文献:
- Tom’s Hardware: “DRAM prices skyrocket 171% year-over-year” (2025/11/04)
- Reuters: “Samsung hikes memory chip prices by up to 60%” (2025/11/14)
- TrendForce: DRAM/NAND価格予測レポート (2025/11)
- Morgan Stanley: “Memory super cycle” リサーチノート (2025/11)
- Commercial Times: DRAM契約価格分析 (2025/11)
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