11.29
NHKラジオ第2廃止認可 総務省決定でAM・FM2波体制へ
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メタディスクリプション: 総務省は2025年11月28日、NHKのラジオ第2放送廃止を認可した。2026年3月31日終了、放送網維持費削減を目的にラジオ第1と統合。教育番組はFM移管、ネット配信継続、災害時AM情報伝達維持。公共放送のデジタル化進展を示す。(118文字)
総務省は2025年11月28日、日本放送協会(NHK)のラジオ第2(R2)放送廃止を正式に認可した。これにより、R2は2026年3月31日をもって終了し、ラジオ第1(R1)と統合される形でNHKのラジオ放送はAM波とFM波の2波体制へ移行する。背景には、放送網の維持費負担増大と聴取率の低下があり、公共放送の持続可能性を高めるための構造改革が急務となっていた。本記事では、この決定の詳細事実、歴史的背景、業界への影響を分析し、公共放送の将来像を考察する。結論として、デジタルメディアの進展が伝統的なAM放送の役割を再定義する転機であることが明らかになる。
認可の詳細と移行計画
総務省の認可は、電波監理審議会(総務大臣の諮問機関)の答申に基づくものである。審議会は同日、NHKからの廃止申請を審査し、公共の利益に資するとして認可を勧告した。廃止の対象は、R2の特定地上基幹放送局で、全国のAM中波帯(主に567kHz帯域)を使用した放送網である。
移行スケジュールは以下の通りである。
- 2025年11月28日: 総務省認可。
- 2026年1月~3月: 廃止に向けた番組調整と周知活動。教育番組のFM移管準備。
- 2026年3月31日: R2放送終了。
- 2026年4月1日以降: R1と統合したAM放送(新AM波)開始。FM放送は既存のNHK-FMを維持。
費用削減効果は顕著で、NHKの試算によると、放送網維持費(送信設備の運用・保守)が年間約20億円削減される見込みである。これは、老朽化したAM送信アンテナの更新費用を抑制する効果が大きい。NHKの2025年度事業計画では、受信料収入の停滞(約6,500億円、対前年比微減)に対し、経費圧縮が課題となっており、本廃止は経営改善の柱の一つだ。
番組編成の変更点も重要である。R2の主力である教育番組(語学講座、科学解説、文化講座など)の多くはNHK-FMへ移管される。具体例として、平日朝の「ラジオ英会話」や「まいにち中国語」はFM帯へ移動し、聴取環境の改善を図る。一方、災害情報伝達機能は新AM波(R1統合後)で維持され、停電時でも動作するAMラジオの耐久性を活かした体制が確保される。また、全番組のネット配信(NHKラジオアプリ、ウェブサイト)は継続し、ポッドキャスト形式でのアーカイブ化も推進される。
これらの変更は、NHKの「中期経営計画(2025~2027年度)」に沿ったもので、デジタルシフトを加速させる。視聴者への影響を最小限に抑えるため、移行期間中はクロスプロモーション(R1・FMでの告知)を強化する方針だ。

ラジオ第2の歴史的背景と廃止要因
NHKラジオ第2放送は、1951年7月1日に教育放送として開局した。戦後復興期の日本で、教育格差是正を目的に設置され、当初は中波帯で全国展開された。開局当初の聴取率は高く、1950年代の「ラジオ英語会話」ブームを支え、生涯学習の基盤を形成した。1960年代以降は、テレビ普及によるラジオ全体のシェア低下を招いたが、R2は教育特化で独自の地位を保った。ピーク時の1980年代には、年間放送時間約8,000時間のうち、教育関連が70%を占め、学校教育の補助教材として活用された。
廃止の要因は多岐にわたる。まず、聴取率の長期低迷である。NHKの2024年度調査では、R2の週間聴取率は1.2%(全人口比)と、R1の5.8%、FMの3.4%を下回る。スマートフォン普及とストリーミングサービスの台頭が、伝統的なラジオ受信を減少させた結果だ。加えて、放送網の老朽化が進み、AM送信設備の維持費が膨張。2020年代に入り、地震多発国日本での耐震強化が追加負担を生んだ。
政策的な文脈も大きい。総務省の「放送サービスの高度化に関する検討会」(2023年報告)では、公共放送のスリム化を提言。受信料制度の持続可能性を巡り、国会でも議論が高まった。NHKは2024年6月に廃止申請を提出し、審議会で「公共性確保」を条件に承認された。この決定は、2021年のNHK経営委員会改革に連なるもので、行政の監督強化を反映する。
国際的に見ても、公共放送のAM波廃止はトレンドである。英国のBBCは、2020年にRadio 4のAM/FM並行放送をデジタル音声放送(DAB)中心へ移行し、維持費を15%削減。カナダのCBCは、2022年にRadio TwoのAM帯を段階的に縮小し、ポッドキャスト投資を増やした。これに対し、日本は災害時のAM依存度が高いため、完全廃止ではなく統合を選択した点が特徴的だ。
業界影響と多角的分析
本廃止は、放送業界全体に波及効果をもたらす。まず、NHKの2波体制移行により、ラジオ市場の競争環境が変わる。民放AM局(TBSラジオ、ニッポン放送など)は、NHKの教育枠撤退で新規参入余地が生まれ、語学・教育コンテンツの拡充が予想される。一方、FMシフトはNHK-FMの聴取率向上を促すが、帯域混雑(特に都市部)で音質劣化のリスクがある。
メリットとしては、費用削減がNHKのデジタル投資を加速させる点が挙げられる。削減分は、AI音声合成を活用したオンデマンド配信や、5G対応ラジオアプリ開発に充てられる可能性が高い。デメリットは、教育アクセシビリティの低下だ。高齢者層(65歳以上、R2聴取者の40%)にとって、FM受信機の普及率(約60%)がAM(90%)を下回るため、移行支援(補助金配布)が急務となる。
他国比較では、日本の場合、受信料依存の構造が改革を遅らせてきた。BBCは広告収入併用で柔軟性が高く、Radio 3の廃止議論(2019年)でも迅速にデジタル代替を導入。CBCは政府補助金削減(2023年10%カット)に対し、AM廃止で対応した。日本は、2025年の電波法改正でデジタル移行を義務化する方向性が見られ、NHK改革が先駆けとなる。
また、災害情報面では、新AM波の強化が鍵だ。東日本大震災(2011年)でAMラジオが避難情報源として機能した実績を踏まえ、総務省は予備電源義務を課す。ネット配信の脆弱性(停電時アクセス不能)を補完する役割は継続されるが、サイバー脅威増大の時代に、ハイブリッド体制の構築が求められる。
経済的考察として、放送設備産業への影響も無視できない。AM送信機メーカーの受注減(推定50億円規模)は、5G基地局転用で緩和される見込みだが、中小企業のリストラリスクがある。全体として、廃止は「守りの改革」から「攻めのデジタル化」への転換点だ。
まとめと今後の展望
- 要点再整理:
- 総務省認可により、R2は2026年3月末廃止、R1統合でAM・FM2波へ。
- 目的は維持費20億円削減、教育番組FM移管とネット配信継続。
- 災害時AM情報維持を条件に、公共性確保。
- 歴史的に教育放送の柱だったが、聴取率低下とデジタル化が廃止要因。
今後の展望として、2026年以降のNHKラジオはデジタルファーストへシフトする。ポッドキャスト市場規模(日本国内2025年推定1,000億円)の拡大を背景に、R2コンテンツの再利用が鍵となる。注視すべきは、移行後の聴取率変動と高齢者支援策の実施だ。また、総務省の次期放送政策(2027年見直し)で、民放への波及が予想され、AM帯全体の再編が進む可能性がある。公共放送の進化は、技術革新と社会ニーズのバランスにかかっている。
参考文献:
- 総務省報道資料(2025年11月28日):https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01kiban04_02000489.html
- 日本経済新聞(2025年11月28日):https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA288NR0Y5A121C2000000/
- ITmedia Mobile(2025年11月28日):https://www.itmedia.co.jp/mobile/articles/2511/28/news132.html
- NHK放送文化研究所報告(2024年):https://www.nhk.or.jp/bunken/research/
- BBC Digital Strategy(2020年):https://www.bbc.co.uk/mediacentre/2020/bbc-digital-strategy
- CBC Annual Report(2023年):https://cbc.radio-canada.ca/en/vision/about-us/annual-reports
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